以下はJill Mason,The Hare,
2005 に記載されている、K.Whitwellさんが解剖した
100匹のイギリスのヤブノウサギから得られた死因の率の順番に病気について簡単にまとめたものです。
Coccidiosis コクシジウム症 (球虫症) 28%
(1) intestinal coccidiosis (腸管コクシジウム症)
原生動物であるEimeriaによる感染症。
不潔な環境で起こりやすい。
仔ウサギに多い。
秋に多い。
小腸から大腸までの粘膜に感染する。
回復した動物は免疫。
(a) 症状
食欲不振、体重減少、しばしば出血を伴う下痢,腸重積
(b)病理
空腸と回腸に炎症と浮腫
粘膜には潰瘍や出血がみとめられる。
(c)治療
Trimethoprim 40mg/kg 経口 7日間
(2) hepatic coccidiosis(肝コクシジウム症)
Eimeria steidae による感染症。腸管に感染する他のEimeriaとはライフサイクルがやや異なる。
十二指腸粘膜に侵入し肝に感染。
(a) 症状
体重減少、脱水、黄疸、下痢、肝肥大
(b)病理
肝と腸間膜リンパ節に様々な成長段階の原虫が存在。
(c)治療
Toltrazuril 25mg/kg 水に溶かして 2日間投与後、5日後にさらに2日間
Dysautonomia
ウマのgrass sicknessと近似の病気。
交感神経と副交感神経系の異常に伴う症状。
細菌が産生する神経毒によるものといわれている。
主に消化管の蠕動が阻害される。
イヌ、ネコ、および鳥類にも起こる。
(1) 症状
体重減少、腹部膨満、呼吸不全、膀胱の拡張、その他、徐脈や瞳孔の拡張など。
(2) 病理
神経節ニューロンの変性。
ウイルス、細菌等の感染や、アフラトキシンなどの影響は認められない。
(3) 治療
特異的なものは無い。
他の消化管系の異常と同様な治療。
頻回の浣腸。
細菌感染 18%
主なものを簡単にのべます。
(1) Yersinia pseudotuberculosis
腸間膜リンパ節、肝および脾臓に結核と同様の乾酪結節と呼ばれる病変を作る。
症状は、痩せと下痢。
(2) Pasteurella multocida
スナッフルに代表される、上気道の炎症を起こす。ヒトの上気道からも検出される常在菌。
(3) Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)
これもヒトの鼻腔などからも検出される化膿菌。ウサギの皮膚などからも普通に検出される。
菌の強さや宿主の免疫状態によっては、膿瘍や敗血症をおこす。
(4) Escherichia coli (大腸菌)
ウサギの腸内には、普通は認められない。特に仔ウサギでこの細菌の感染による腸炎が起きると、
致命的になる可能性がある。
これらの細菌感染症にかんしては、カイウサギの飼育書に比較的詳しく記載されていま
す。
と、ここまで書いてきて気づくのは、多くのカイウサギが罹患し苦しんでいるEncephalitozoon(EZ)が出てこないことです。
同じ原生動物でも自然界に存在する率や場所が違うのか、EZがカイウサギの体内に連綿と引き継がれているものなのか、
はたまたノウサギは粘液腫と同様、EZに抵抗性があるのか、、、。
今後の研究に期待しましょう。
野うさぎの病気